カテゴリー別アーカイブ: 木工

wood

木口木版 菅原

林風舎

銀河鉄道の夜・四次元

林風舎

マグのリアの木
(宮沢賢治、マグノリアの木より)

菅原はじめさんが当初目指したのは、グラフィックデザイナーです。専門学校を通じてパリに進学、帰国後はデザイナーとして就職しようとしますが、クライアントとの表現の間に葛藤を覚え、故郷の遠野市宮守町(旧宮守村)に帰郷。

将来の道を模索していた時、花巻文化村で美術家・木版画家の井堂雅夫に出会い師事。同年、岩手県第1号のNPO法人となった花巻文化村と京都の版元「歓栄堂」の職人に木版画を学びました。その頃、秋田のギャラリーで木口木版と出会います。自らの表現方法に合った技法だと実感し以来少しずつ創作を続け、現在は花巻駅のすぐ近くにある林風舎に勤めながら、自らの作品も展示しています。

菅原さんの版画は木口木版と呼ばれ、西洋で蔵書印(EX-LIBRIS)を作るために生まれたものです。木を縦に割った版木を使用する一般的な板目木版とは異なり、木を木目と直角に輪切りにした面を使います。輪切りですから、どれ一つとっても同じ版木はありません。木の大きさや年輪のかたちも違い、とても面白いものだそうです。摺りには黒のみを使用し、白と黒のみで表現しています。

版木はサクラやツゲ材のような硬い木を使用し細かな図案を彫るため、主に銅版画に用いる道具であるビュランを使って彫ります。はじめに木の年輪や表情から構想を練り、サンダーをかけて版木の全体を磨きます。「これは私なりのやり方です。この全体を磨き上げる工程で木が私に語りかけてくるような楽しみもあります。」この作業が終わって、いよいよ版木の下書きにとりかかります。大きなイメージを下絵に描き、裏返してカーボン紙を挟み、版木にトレースします。他の細部の表現は、彫りながらイメージを広げていきます。

「輪切りにした木を使うため、あまり大きな版木が得られませんが、木それぞれの表情があり面白いですよ」と話す菅原さん。2001年岩手県芸術祭版画部門部門賞、2002年岩手県芸術祭版画部門奨励賞を受賞。今は、新たなテーマとして木口木版での曼荼羅の可能性を思案中、従来の曼荼羅とは一味違う独自の版画に想いを巡らせています。菅原さんの新たな活躍が楽しみです。一部の作品は花巻市の林風舎においでいただければご覧いただけます。また、時間があれば菅原さんとお話も出来るかもしれませんね。

菅原 アトリエ(自宅)
〒028-3171 花巻市石鳥谷町中寺林7-69-27

林風舎
〒025-0092岩手県花巻市大通り1丁目3-4



より大きな地図で 阿都麻焼(あずまやき)悠工房 を表示

工房 Carpentry 優遊結(ゆうざん)

優遊結(ゆうざん)

唐辛子のマスコット(木彫)
ホオノキ/色うるし塗り

優遊結(ゆうざん)

葉っぱの小皿(木彫)
ホオノキ・ケヤキ/カシュー塗り

優遊結(ゆうざん)の千葉さんは小学生時代に見た岩谷堂箪笥に魅せられ、中学卒業と共に木工の道に進もうと考えていたそうです。周囲から「せめて高校ぐらいは出といたら」といわれ、気がついてみると大学生に。卒業と共に一旦は家具の製作会社を就職先に選びましたが、木工への思いは捨てがたく、離職したのを機会に木工作家の道へ。

木工の仕事をするにあたり、特に師匠を持たず独学で技術を身につけました。木に関する事で判らなければ、その都度木工の専門家を訪ね、教えを請いました。漆塗りは宮古市にある漆芸美術館へ1年ほど習い、現在の工房を開いたそうです。木の素材が生きるものはないかと考え、木の木目を生かした時計を思いつきました。素材の木を選び、丹念に磨き、そして切り抜き、漆を塗り、シンボルの唐辛子をあしらい、最後に時計の仕掛けを施して完成させます。一つの作品が出来るまで、かなりの時間と材料費がかかります。かといって売値を高くするわけにはいかないので価格を抑えて販売。作品は思いの他売れましたが、製作する労力は値段以上でした。

木工作家が作る手作りの作品は、すごく手間がかかるものですが、購入する人と作る人との隔たりを感じて悶々とした日々を送っていました。そんな時に出会ったのが木彫りです。千葉さんは体験工房を開いたいきさつを語ってくれました。「岩手県内にも色々なサークルで多くの人が関っており、やってみたい人はさらに大勢います。自分で作ってみれば楽しさや物作りの難しさもわかってもらえるし、木工の大変さや木工家の作品の素晴らしさがわかってもらえるのかなとも考え、これを私の工房でやっていこうと考えました」

木彫りは、デザイン・材料加工・木彫り・塗り上げの工程があります。参加者に女性が多いため、デザインや木彫り作業に問題はないのですが、材料の加工に苦労したようです。木には色々な種類や材質の違いがあるため、それを知るため工房ではすべての工程を体験することにしました。

「木の選び方や加工は、私が独学で勉強したころ、多くの木工に携わる人との出会いから学びました。女性では難しい材料選びや危険な材料加工といった部分を含む全行程を提案していきたいと考えています。それがひいては木工の専門家のすごさを理解してもらえるのではないかと考えています」

優遊結(ゆうざん)は、デザインから材料加工・木彫り・塗り上げの工程まで全てをおこなう数少ない工房です。作家の木にかける情熱を感じてきました。

Carpentry 優遊結(ゆうざん)
〒020-0127 岩手県盛岡市前九年3丁目27-50



より大きな地図で 阿都麻焼(あずまやき)悠工房 を表示

デッサン&クラフト梅里

さまざまな木たちの小さな家

さまざまな木たちの小さな家

さまざまな木たちの小さな家

制作サイズは実際の150分の1で統一

「デッサン&クラフト梅里」の工房の主、梅里さんの作品は「木」をとても感じられる作品です。もともと水彩画家でもある梅里さんは、自作の絵を入れるための気に入った額が見つからず、自ら額を作り始めたそうです。使い慣れた絵筆を置き、電動鋸やノミといった木工道具と格闘。初めて絵画用の額を作りました。その後、器用さは止まるところを知らず、さらに棚や椅子も作ります。木工製作の過程で気づいたのが、木の色や肌ざわりの違い。それぞれの木が自己主張しているようで、これを表現する事が出来ないものかと考えて完成したのが、今のミニチュア作品「さまざまな木たちの小さな家」です。

一般に使われる家具や木工製品には塗料が使われており、木肌本来の美しさがありません。木の色やぬくもり、肌触りの質感を手にとって味わう事は普通の木工製品ではなかなか出来ません。この小さなサイズのものなら簡単に触れる事も出来るし、家を童心に帰って眺める事もできます。一つ一つは小さな家ですが、組み合わせれば大きな町も出来上がります。

「私が苦心したのは、さまざまな木をうまく生かす事。屋根と壁面の色の違い、木の組み合わせ、窓の大きさ、と一つ一つに個性も与えています。また、単純に小さいだけではなく、制作サイズは実際の150分の1で縮尺がはっきり決まっていて、家の内部もくり貫き、窓の雰囲気も表現しています」

「こんな小さな窓を工作する道具はあるのですか」と尋ねると「もちろんありません、創作する道具作りからやらないと作品はできないですよ」とおっしゃっていました。手に取り、眺めれば眺めるほどに心が静まってくるのは、やはり木で作られているせいでしょうか。

2007年には世界文化社発行の家庭画報の「夢のある美しい暮らし」の手づくり部門に「チャペルタウンの祈り」という作品を出品して大賞に選ばれました。木の質感や色を表現するミニサイズの家。夢のある作品です。

デッサン&クラフト梅里 盛岡市大館町21-39 TEL080-3198-8828


きさ工房

橋本勲さんの作品

橋本勲さんの作品

橋本勲さんの作品

橋本勲さんの作品

大学を卒業後、好きだった木に関わりたく、岐阜県立高山高等技能専門学校木工工芸科で学び、2年間高山市内の和家具メーカーに勤務。その後友人からの誘いもあり岩手に。1990年「きさ工房」として独立。宮沢賢治の故郷という事にも引かれ、最初に住んだのが小岩井駅の近く。もともと東京都内で生まれ育った橋本さんに「岩手の冬は大変じゃないですか」とお聞きすると「いや、高山はそれほどでもないけれど岩手より寒かったので別に大変とは思わなかった」と。

さらに、小岩井に住み始めた時の印象を語ってくれました。「当時の小岩井駅周辺は夜になれば近隣に明かりはなく、人一人歩いていない。しんと静まり返った駅舎。満天の星。ああ~賢治の郷か、と感激したのを今でも思い出します」

暮らすこととは別に、大変だったのが、仕事のための木材の調達。「東京で仕事をしていた時は電話一つですぐ木材が入手可能だった。岩手では電話帳を見て探したが、移動製材所とか東京では聞いた事すらない製材所があり、木材入手に苦労した。材料の木材は製材してから最低でも3年は乾燥させなければいけない。板を買ってすぐに製品に出来るわけではない」山村の製材所や廃業した製材所に自ら出向いて乾燥した木材を分けてもらった話をしてくれました。現在では県の森林組合の製材所から材を求めることが出来ますが、当時を振り返ると「そんな苦労も楽しい思い出だ」とも話していました。

橋本さんの作品作りはクルミ・ヤマザクラ・ヤマナシ・トリネコ・エンジュといった広葉樹はもちろん、杉やヒバのような地元産の針葉樹を使います。それぞれの木の個性を見極めることからはじめ、木の色合い、肌合い、強さを生かし、シンプルな製品作りを心がけています。注文製作はお客様のイメージに合わせて、極力自分のカラーが出ないように心がけて製作しているそうです。

作業中は対応できませんので、訪問の時は必ず事前にご連絡ください。
きさ工房
岩手県岩手郡雫石南畑28-335